作詞家の松井五郎さんに歌詞をいただいて曲を書いたことがターニングポイントになっている。
それまでの僕は、曲は自分で全て書かないとダメだと思っていた。
自分の憧れているアーティストが皆そうだからだ。
歳を重ねるごとに強く思うが、
僕は天才でもないし、
秀才でもない。
才能なんてあるかどうかわからない。
これまで音楽をやってきて思うが、
アイデアが泉のように湧き出るタイプの人間ではない。
考えて考えて考え込まないと生み出せないタイプだ。
そんなに多角的に物事を捉えられるタイプでもない。
「思い込んだら試練の道を行くが男のど根性」タイプだ(笑)。
だから、憧れているアーティスト達のようになんでも器用にこなせる人間ではないので、
そういう人に追いつくために自分はどのくらいやればいいのかをいつも考えている。
話を戻すが、
松井五郎さんと一緒に曲を作らせていただいた時に、自分の歌の世界が広がっていく気がした。
自分にはなかった感覚や言葉、
世界観や思想観念が曲に宿った。
初めて自分の作ったものを俯瞰して見ることができた。
それによって何が起きたかというと、
その曲を時間が経ってもずっと同じ熱量で愛していけるのだ。
これは僕の中でかなりの発見だった。
自分の手で作った歌は、
自分のボキャブラリーやキャパシティが広がっていくほどに修正加筆を加えたくなる。
しかし、
そこに人の手が加われば、
それは自分の範囲を超えて存在する作品となる。関わった人の思いが加わることで、
僕自身は純粋にそれを伝える歌い手として存在できるのだ。
今回のアルバムでも同じことが起きている。
楽曲の中で多くの人に関わっていただいたおかげで、すでに作っている段階から自分の手を離れ自由に羽ばたいている音楽を感じている。
この「soratowa」もそうだ。
曲と歌詞を頂き、
それをどう歌いこなしどう表現するかということにフォーカスしていく。
言葉の意味を読み取り、
反芻し、
自分のものとして心に留めていく。
「自分のもの」になるまで歌いこんで練り上げていく。
この宇宙の力
この宇宙の奇跡
僕の魂
繋がっていく
宇宙を形成する物質も、
人間を形成する物質も、
この世にある全て、
同じ物質を共有している。
目には見えないし、
感じることはできないが、
事実として繋がっているのだ。
僕ひとりでは絶対に書けなかった歌がアルバムの中に存在し、
他の曲と共鳴し合い、
輝き合っている。
たどり着けない場所へも、
誰かとならたどり着ける。
そしてまた新たな歌を歌っていける。
今はもう、憧れのあのアーティスト達のようになりたいとは思っていない。
アルバム「キョウメイ」に並ぶ曲達に誇りをもっている。
あぁ共鳴するということは、
なんと尊いことだろう。
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